『バラバラでいっしょ』

           自慢できるふる里があるか!
筑紫哲也氏 講演会より

 
 4月20日夜6時半、筑紫氏は高山市民文化会館に来られた。全くテレビで観る容貌に寸分違わぬ方であった。7時より、耳慣れたお声と口調で、玄興寺「同朋の夕べ」記念講演会が始まった。

 演題は「人間」。主催者側の玄興寺がお願いしたものである。筑紫氏はこのテーマに深い関心を寄せ、平成10年東本願寺で執行された蓮如上人五百回御遠忌の「バラバラでいっしょ」というテーマに共感し、その底に流れる人間の命の平等と自由に焦点を当てた。話は、昨年9月11日の米国同時多発テロに始まり、現在の戦争にいたる過程の中で、一神教的発想と多神教的発想の世界の現況へと展開し、正義を立てることにより、他を悪の枢軸として互いに排斥し合う愚かさを指摘する。と同時に、山川草木一切にそれぞれかけがえのない「いのち」のあることを説く仏教の世界観が極めて重要であることを強調された。

 この基本的視点より「人間の幸福」としてあなたは、ふる里を自慢できるか≠ニ問いかけた。それぞれがそれぞれのところで自慢できる生き方と、環境づくりをすることこそ幸福の表れであり、度合いであると。互いに尊重し合う努力が伴ってこそ「共なる」(いわゆる「いっしょ」の)世界が進展していくと言う。筑紫氏は「多事争論」のごとく、まさに多事にわたって「人間」の限りない不思議さと、だからこそ「人間」のおもしろさを、せつせつと語られた。
 氏の高山訪問は2年目。自分の故郷と二重写しにして、都会の犬年(1年が7年の早さで進むあり方)よりゆっくりした歩みの活性化の方がいい≠ニ、都会に住んでいてうっかりする盲点をふり返りつつ、ユーモアをふんだんに混じえて語られ、満場の聴衆を魅了した講演の幕を閉じた。



文 玄興寺蓮如上人五百回御遠忌法要事務局
『さるぼぼ倶楽部』(平成14年5月1日号)より




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